光補償点とは、植物が光合成によって二酸化炭素(CO₂)を吸収する量と、呼吸によって放出する量が等しくなる光の強さ(照度)のことを指します。
この点では、植物の炭素収支はゼロになり、成長がほとんど進みません。光補償点より低い光の強さでは、植物は光合成よりも呼吸によるCO₂の放出量が多くなり、エネルギー収支がマイナスになります。そのため、植物の生育には光補償点を超える光量が必要です。
ボタゾン本記事では、光補償点の具体的な値や環境要因との関係、農業や植物栽培での活用方法について詳しく解説します。








光補償点の説明


光補償点は光合成速度と呼吸速度が釣り合う光強度であり、通常はμmol/m²/s(マイクロモル毎平方メートル毎秒)という単位で表されます。
代表的な植物の光補償点(概算値)
| 植物の種類 | 光補償点(μmol/m²/s) |
|---|---|
| 陽生植物(例:ヒマワリ) | 20~50 |
| 陰生植物(例:シダ類) | 5~10 |
| C4植物(例:トウモロコシ) | 10~30 |
| C3植物(例:コムギ、イネ) | 10~20 |
- 陽生植物(ひあたりの良い場所に適応した植物)は、光補償点が高く、強い光のもとで効率よく光合成を行います。
- 陰生植物(日陰で生育する植物)は、光補償点が低く、弱い光でも光合成が可能です。
- C3植物とC4植物では、C4植物(トウモロコシやサトウキビ)の方が光合成効率が高く、光補償点もやや高めになります。
光補償点に影響を与える要因


光補償点は、光の強さだけでなく、温度・二酸化炭素濃度・葉の状態などの要因によって変化します。
① 温度の影響
- 温度が高いと呼吸速度が増加し、光補償点が上昇する(光合成よりも呼吸が優位になりやすい)。
- 一般に25~30℃程度が光合成の効率が最も高く、35℃を超えると光合成速度が低下する植物が多い。
② 二酸化炭素(CO₂)濃度の影響
- CO₂濃度が高くなると、光合成速度が向上し、光補償点が低下する(少ない光でも光合成が活発になる)。
- 一般的なCO₂濃度(400ppm)に対して、1000ppmまで増やすと光合成効率が最大50%向上することが報告されている。
③ 葉の老化やストレスの影響
- 葉が老化すると呼吸が増えて光補償点が上昇し、光合成能力が低下する。
- 水不足や病害虫の被害があると、光補償点が上がり、成長が抑制される。
農業や栽培での光補償点の活用


① 適切な照明管理
植物の光補償点を理解することで、温室栽培や水耕栽培における光環境の最適化が可能になります。
- 陰生植物には弱めのLED照明(5~20μmol/m²/s)を使用。
- 陽生植物には強いLED照明(50~200μmol/m²/s)を使用し、生育を促進。
- CO₂を追加供給することで、低い光量でも光合成を効率化。
② 収穫量の向上
- 光補償点を超える適切な光強度を確保することで、植物の成長を最大化し、収穫量の向上につながる。
- 特にトマトやイチゴの栽培では、人工光とCO₂施肥を組み合わせると収穫量が1.5倍以上になることが研究で示されている。
よくある質問(Q&A)


Q1. 室内で観葉植物を育てるとき、光補償点はどう考えればいい?
A. 室内栽培の場合、特に陰生植物(モンステラ、シダ類、ポトスなど)は、光補償点が低いため自然光だけでも生育可能です。しかし、日照時間が短い冬場や北向きの部屋では、LEDライト(5~10μmol/m²/s)を補助的に使用すると良いでしょう。
Q2. 光補償点よりも低い光環境では植物はどうなる?
A. 光補償点以下の光強度では、光合成よりも呼吸が多くなるため、植物は徐々にエネルギー不足となり、成長が止まるか、最悪の場合枯れてしまいます。
Q3. 光補償点と光飽和点の違いは?
A. 光補償点は「光合成と呼吸が釣り合う点」ですが、光飽和点は「それ以上光を増やしても光合成速度が上がらない点」を指します。
- 陰生植物の光飽和点は50~100μmol/m²/s
- 陽生植物の光飽和点は500~1000μmol/m²/s
Q4. CO₂を増やすと光補償点はどのくらい下がる?
A. 一般的にCO₂濃度を400ppm → 1000ppmに増やすと、光補償点は約30%~50%低下します。これは、より少ない光でも光合成が効率よく行われるためです。
まとめ


光補償点は、光合成と呼吸が釣り合う光強度であり、植物の生育に重要な指標。
陰生植物は光補償点が低く、陽生植物は高いため、栽培環境に応じた光管理が必要。
CO₂濃度や温度が光補償点に影響を与えるため、適切な環境調整が重要。
農業や植物栽培では、光補償点を理解することで収穫量の向上につながる。



光補償点を意識することで、より健康な植物を育てることができます。特に室内栽培や温室農業では、光の管理が成功のカギとなるので、適切な照明とCO₂コントロールを心がけましょう!


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